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第15回定期演奏会」に戻る
(BGMとしてお耳に達していますのは、この曲の「キリエ」のMIDI音です)
W.A.Mozart 「 Missa brevis in G
KV49(47d)」
(1756〜1791年)
- Kyrie
- Gloria
- Credo
- Sanctus
- Benedictus
- Agnus Dei
今年は、1756年1月27日にザルツブルグで生まれたモーツァルトの生誕
250年の節目に当たり、世界各地でこの節目を祝ってモーツァルトの作品が
演奏されています。 当合唱団もこの記念すべき年に開催する定期演奏会
の演目に「ミサ・ブレヴィス ト長調 作品49」を取り上げました。
当合唱団では、既に第8回定期演奏会(1996年6月3日 於 くすのきホール)
の際に、この曲に挑戦しています。 その際にはソロは団員ソリストで演奏
しましたが、今回は気鋭のプロにお願いする予定です。
この曲は1768年10月から11月の間にウィーンで作曲されました。 12歳
のモーツァルトはこの年に、作品番号45の交響曲7番を手始めに交響曲8番、
オペラ「バスティアンとバスティエンヌ」を含む10曲の作品を作曲しています。
左に掲載した肖像は、「1766〜67年頃にピアノを
弾くモーツァルト」と題するHelbling という画家
の作品で、今回の「ミサ・ブレヴィス」を作曲した
時代に近い「少年モーツァルト」の姿を捉えたもの
と言えましょう。
モーツァルト自身の伝記的な解説は、多くの書物があるのでここでは省きます。
この曲の解説として、私達が使っている楽譜(ブライトコップ版)の序文
(原文の独文を英訳したもの)を邦訳して、以下にご紹介します:―
『 モーツァルトはこの 「ミサ ブレヴィス」 (長い間 ≪孤児院のミサ≫ と考えられ
ていました) を4声部、ヴァイオリン 2、ヴィオラ、ベース 、オルガンの為に、
1768年10月から11月の間にウィーンで作曲しました。 ブレヴィス」(短い)と いう
表示は、それが通常の日曜礼拝の為と限定されている事を暗示しています。
簡潔な長さなので、このミサには殆んどテキストの繰り返しがありません。
合唱がオーケストラを支配します。 その上、楽器はしばしば単に声部の伴奏
( ヴァイオリン-I はアルトのオクターヴ上、ヴァイオリン-II はソプラノ ) をします。
ソロ・パートは、例えば Credo に於ける様に、また、その時代の習慣であった
Benedictus に於ける様に、散発的に行われます。
このミサは古風な、寧ろ厳密な対位法で書かれていますが、それにも拘らず、
ザルツブルグの伝統のより柔軟なスタイルを裏切るものです。 ミサの楽節の
中の下位区分は、(テンポ、拍子及び調性の変化と同様に)ムードの変化を
表わしています。 唯、単に副次的には構成上の機能を果たしています。
非常に短いKyrieに続く Gloria は、「miserere」で伝統的な増音程の第二音程
があり、「cum sancto Spiritu」では、声部のフガートがこれも習慣的なこれ等の
言葉で歌われます。
Credo では、モーツァルトは何時ものように、
好く知られたメロディーや ハーモニーを持った
音形の宝庫を訪れています。
斯くして、「Crucifixus」には減七和音を含む
メロディーが配され、続いての歌詞は半音階的な
下降形のバスラインから成る和声の基礎の上に
乗っています。 更に、伝統的な結びの言葉である
(1770年頃のMozart - Blanchet作) 「et vitam venturi saeculi」 の歌詞に乗った
声部のフガートは、上昇形の六音音階による進行 の上に 作られて居り
(バッハの「平均律クラヴィーア曲集 the Well−Tempered Clavier」 第一巻の
ハ長調のフーガで好く知られています)、その後に四度下降 します。
この時代の典型的な特徴を 示す他の例としては、「descendit」と「ascendit」の
<空間的>作曲法や、「vivos et mortuos」という歌詞に就いての 減七和音へ
向けてのバスの減五度下降形の跳躍進行などであります。 モチーフの
相互作用 は「Et resurrexit」に対する「Et unam sanctam」の回帰、
「Crucifixus」に対する「qui cum Patre et Filio」の回帰によって達成されて
います。 「Et resurrexit」の 単純で「古典的な」調和 V ― I (属音 ― 主音)が、
「Et incarnates est」のより暗い色合いとコントラストをなしています。
もう一つ印象的なのは、「Et in spiritum sanctum」に於けるアリア風のバスの
ソロであります。
Sanctusでは、モーツァルトは再度、前のモチーフである「Hosanna」の
六音音階を取り上げています。
このミサ曲では、モーツァルトは典礼式の順序に従った作曲をしませんでした。
この事が、以前の版では、モーツァルトが意図していなかった「Hosanna」の
Da Capoによる逆行した順序の編曲 (1 ― 3 ― 2) を 引き起こしたのでした。
Benedictus もまた、本来が複数のソリスト用に設定された声部という伝統に
沿って居ます。
Agnus Dei では、陰鬱な「Agnus Dei, qui tollis peccata mundi」の後、
殆んど世俗的な 陽気さを持った「Dona nobis pacem」でムードが一変します。
ここでの自筆による二箇所の削除部分 (19小節以後) が、誤った和音の
<途切れ>を生じさせて仕舞っています。 Neue Mozart-Ausgabe の後に、
削除された6小節のうち2小節は再び取り入れられました。』